真っ黒な朝だった。
 世界は闇に覆われて辺りは何も見えず、だがしかし所々に煌めく裂け目が見えた。
 闇夜。こんなものを見たのは何ヵ月、いや何年ぶりだろうか…
 もう意味は無かったが、時計を確認してみる。
 草原の広がるこの場所にあるのは寝転がる彼と吹き抜けていく微風だけだった。
 
 6時。
 
 時計の針は昨日から6時丁度を差したまま、決して動くことはなかった。
 だから6時かもしれないし、そうではないかもしれない。
 
 どうでもいいのさ、と呟いて、彼は立ち上がる。
 
 この世界にいる限り、腹は減らない。
 
 この世界にいる限り、俺は自由なんだ。
 
 なのに何故だろう…
 こんなに哀しいのは。
 彼にはそれ以上分からなかった。
 
     ☆       ☆       ☆     
 
 彼が居なくなって、既に28時間が過ぎた。
 でも誰も気付く事はなく。
 彼が居なくなった世界、「日本」…
 そこで彼が居なくなった事に気付くのはただ一人だった。
 彼をその世界に送ったのもまたその人だ。
 彼とも彼女ともつかない「それ」は魔の手を人間に向ける。
 そして自分の世界に連れ込むのだ。
 それを「神隠し」という。
 だが、決してそれは神ではない。とはいえ、害をもたらすものでもない。
 ただ人間と遊びたかっただけなのかもしれない。
 忘れ去られてしまったものを思い出して欲しいのかもしれなかった。
 
 そしてまたそれは手を伸ばす。
 人間と遊ぶ為に…
 
 
 
 (注釈:腕が勝手に動いた挙句に書き上がった謎の文章。
 何故書いたのかもわからない。
 きっとこの当時は神隠しや都市伝説が好きだったんでしょう。
 もはや全てが懐かしい黒歴史。)